会長挨拶

 1987年本学会の前身である自己血輸血研究会発足時に、私は恩師田中教授の勧めもあり入会し31年間にわたり本学会に関わって参りました。今回、第31回学術総会会長の栄誉を賜り非常に光栄に存じます。本学術総会のテーマを「周術期の貧血改善を求めて」といたしましたが、諸先輩ならびに会員の皆様方のご協力の下、実りある学術総会を開催したいと思います。
 現在、世界で健康寿命が一番長いのは日本です。しかし、今後、超高齢化社会を乗り切るには、医師・スタッフならびに患者も疾患を『歳のせい』としてあきらめないことが必要です。高齢化により、手術患者は骨粗鬆症や慢性腎不全などの合併症を抱えています。特に貧血状態は周術期合併症リスクを増加させ、術後リハビリテ-ションにも抵抗します。手術や自己血輸血を担当する医療従事者はこれらの周術期の全身状態を念頭に置く必要があります。
 逆ピラミッド型人口分布により献血者は拍車をかけて減少しています。一方、手術時の自己血輸血は各科を超えて、患者の手術への意欲向上と周術期の安心には欠かせない方法です。今後、日本経済を発展させた団塊の世代が手術する機会が増えます。手術時には、①健康状態の把握と理解(歯周病、禁煙、合併症の先行治療)、②周術期貧血の改善(鉄剤、葉酸、持続型エリスロポエチン治療)、③低血圧麻酔の適応や低侵襲術式の選択、④自己血輸血(貯血式、希釈式、術中・術後回収式)の選択、⑤止血や組織接着への自己クリオシ-ルの応用、⑥痛みや血栓症合併のない術後早期社会復帰、が必要と考えられます。
 USJや万博公園や法善寺横丁も良いですが、何はともあれ『浪速』の文化を堪能して下されば幸いです。大阪歴44年の菊池が選んだ会場は、格調高く美しい大阪市中央公会堂(国指定重要文化財)で2018年には創立100周年を迎えます。
 本学術総会のテーマ「周術期の貧血改善を求めて」、皆様方のご演題発表と討議を通して自己血輸血を含めた周術期の安全性を高めていきたいと祈念しております。そして、会員の皆様のご協力を賜り、充実した学術総会を目指していきたいと思います。是非とも、スタッフお揃いでご参加下さいますよう、心からお願い申し上げます。
2017年7月吉日
第31回日本自己血輸血学会 学術総会会長
近畿大学医学部 堺病院病院長/ 整形外科教授
菊池 啓
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