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貯血式自己血輸血の概要と実際


ホーム 自己血輸血の実際 貯血式自己血輸血の概要と実際

以下よりPDFファイルをダウンロードできます  
   
  貯血式自己血輸血の概要と実際(1)
    ・・・I  インフォームド・コンセント、II 適応患者と禁忌  (PDF651KB)
   
  貯血式自己血輸血の概要と実際(2)
    ・・・III  貯血前に必要な検査、IV  採血スケジュールの決定、V  患者さんへの採血前後の注意点  (PDF:483KB)
   
  貯血式自己血輸血の概要と実際(3)
    ・・・VI  採血時に用意するもの、VII  全身状態のcheck、VIII  採血前の処置、IX  皮膚消毒と採血  (PDF:817KB)
   
  貯血式自己血輸血の概要と実際(4)
    ・・・X  採血後の処置、XI  自己血の保管管理、XII  自己血液の返血、XIII  エリスロポエチンの使用法、XIV  貯血式自己血輸血の3原則  (PDF:496KB)


ご説明する内容

インフォームド・コンセント 採血前の処置
適応患者と禁忌   皮膚消毒と採血
貯血前に必要な検査   採血後の処置
採血スケジュールの決定   自己血の保管管理
患者さんへの採血前後の注意点   自己血液の返血
採血時に用意するもの   エリスロポエチンの使用法
全身状態のcheck   貯血式自己血輸血の3原則

インフォームド・コンセント

平成9年に、厚生省(現、厚労省)から輸血に関する説明と同意(インフォームド・コンセント)の取得を義務づける通達が出された。自己血輸血を行う場合にも、患者さんまたはそのご家族などの代諾者に十分な説明を行い、文書による同意を得、同意書に医師も署名する。

1)手術の際、輸血を必要とする場合があること
2)輸血を行わない場合の代替療法とそのリスク、また、輸血を行わない場合手術に影響を及ぼすリスクもあること。
3)輸血の選択肢としては、自己血輸血と同種血輸血があること。
4)同種血輸血の問題点として、(1)同種抗体によって生じる発熱、蕁麻疹、(2)輸血後移植片対宿主病、(3)核酸増幅検査(NAT)導入後にも肝炎、エイズなどの輸血感染症などの危険性がある。したがって、適応に合致する患者さんには自己血輸血が望ましいこと。(図1図2

5)自己血輸血には3つの方法があること。
[1]術直前採血・血液希釈法(希釈法)図3
手術室で全身麻酔導入後、一度に1,000ml前後の自己血を採血し、採血量に見合った量の輸液を行い、患者さんの血液を希釈する方法。手術終了時に、自己血を返血する。

[2]出血回収法(回収法)図4
手術中や手術後に出血した血液を回収し、返血する方法。手術中の出血を吸引によって回収し遠心分離器で赤血球だけを回収し返血する術中回収法と、手術後に出血した全血をフィルタ−を通して戻す術後回収法がある。

[3]貯血式自己血輸血(貯血法)図5
手術前に2−3回採血を行い、採血した血液を手術中や手術後に患者さんに輸血する方法。自己血の保存法によりさらに3つの方法に分けられる。
1) 全血冷蔵保存:
自己血を全血としてそのまま4−6℃で冷蔵保存。保存液としてCPD(citrate-phosphate-dextrose)を使用する場合には21日間、CPDA-1(citrate-phosphate-dextrose-adenine)を使用する場合には35日間保存可能である。
2) MAP赤血球と新鮮凍結血漿(FFP)保存:
自己血を赤血球と血漿に分離した後、赤血球にMAP液(mannitol- adenine-phosphate)を加え冷蔵保存、血漿はFFPとして冷凍保存する。
3) 冷凍赤血球とFFP保存:
自己血を赤血球と血漿に分離した後、それぞれを冷凍保存し、手術当日に解凍して使用する。

6)それぞれの方法には長所と短所があること(図6)。

7)貯血式自己血輸血についての説明(図7
(1)貯血するには日時を要すること。
(2)バッグ破損や細菌汚染により使用不可能となる場合があり得ること。
(3)貯血量不足の場合の場合は、同種血輸血を併用することがあること。
(4)貯血量が過剰の場合には廃棄すること。
(5)採血時に血管迷走神経反射が起こる場合があること。 (VVRの説明:図30図31)


適応患者と禁忌

貯血式自己血輸血の適応
全身状態が良好な輸血が必要と考えられる患者が適応となる(図8)。

米国麻酔学会(American Society of Anesthesiologists; ASA)による術前患者の状態評価(図9)やニューヨーク心臓協会(New York Heart Association; NYHA)による心機能分類(図10)を参考として決定する。

貯血患者における年齢、体重、Hb値に関する規定
原則として、年齢体重の制限はない。Hb値は11g/dL以上を原則とする。
図11
慢性関節リウマチ(RA)などの慢性炎症に伴う貧血患者ではエリスロポエチンを併用することにより11g/dL未満でも採血が可能であるが、下限値は施設における輸血療法委員会で決定することが望ましい。

貯血式自己血輸血の禁忌
1)菌血症の恐れのある細菌感染患者(図12
2)不安定狭心症患者
3)高度の大動脈弁狭窄症(AS)の患者
4)NYHA IV度の患者

貯血前に必要な検査

血算、血液型、不規則抗体、感染症検査を行う。
また、菌血症の恐れのある細菌感染患者をcheckするために、CRPは有用である(図13)。


採血スケジュールの決定

1)採血スケジュール決定に際しては、貯血予定量を決定した上で、1回の採血量(上限400mL)、採血間隔(原則1週間以上)から決定する(図14)。
2)手術日から逆算して、初回採血日を決定する。800mlを貯血する場合は、例えば、手術の2−3週前から1回に400mLずつを2回採血する(図15)。
3)初回採血日から手術日まで期間が短いときは、手術日を再考すべきである。
4)採血スケジュールが決定したら、適合する保存液(抗凝固剤)を選択するとともに、鉄剤の投与スケジュールを決定する(図16)。
5)鉄剤投与にあたっては、「自己血採血には鉄剤は必須です。鉄剤を服用すると便が黒くなりますが心配ありません。また、患者さんによってはエリスロポエチンという赤血球を増やす薬の注射をすることがあります。」などを必ず説明しなければならない(図17)。

患者さんへの採血前後の注意点

1)採血前日の注意点
採血前日には十分に睡眠を取るように指導する(図18)。

2)採血当日の注意点
採血前は食事をきちんと摂るように伝える。患者さんによっては、検査前の食事を摂らない人もいる。
また、循環器系や糖尿病の薬を使用している患者さんはいつも通りに服用することを指導する(図19−1図19−2図19−3)。

3)採血時の注意点
「献血と同じです。(1)血圧や体温測定、(2)採血をする部分の皮膚消毒、(3)採血針の刺入、(4)採血、(5)患者さんによっては採血終了後輸液をします、の順に行います。採血によってまれに気分が悪くなることがあります。医師または看護師に申し出てください。」、など採血の概要を説明する(図20)。


採血時に用意するもの

消毒用エタノール綿 ローラーペンチ
ポビドンヨード液   1kg用台秤り
採血バック   チューブシーラー
駆血帯   採血器
ペアン鉗子   警報機のついた温度記録付き保冷庫

採血器は必須ではないが他のものは必須である図21)。

全身状態のcheck

体温、血圧、脈拍などを測定し、採血が可能かどうかcheckする。とくに37.2℃以上の発熱があるか、食事を摂取したかに注意する(図22)。

採血前の処置

1)自己血専用の採血ラベルへの署名
採血ラベルに患者さんが自筆で署名する(図23)。

2)採血バッグの破損の点検
手で加圧することなどにより、バッグの破損などがないことを確認する(図23)。

3)結露
採血バッグの包装を開けたときにバッグの表面が濡れている場合には、通常は結露したもので破損ではない。しかし、バッグを手で加圧して内容物の漏れバッグ破損の有無を確認する必要がある(図24:テルモ株式会社 ニューズレターNo.2より引用)。


皮膚消毒と採血

皮膚消毒
1)穿刺部位の決定
通常は肘静脈を穿刺する。汚染の化膿性のある部位は避ける(図25)。

2)皮膚消毒の原則
消毒後は穿刺部位に絶対に触れてはならない。
血管を探りながら穿刺する場合には必ず滅菌手袋を着用する(図26)。

3)実際の消毒(図27
70%イソプロパノールまたは消毒用エタノールで皮膚の汚れを十分にふき取る。10%ポビドンヨード(PI)の殺菌効果が減少するからである(図28右)。
その後、PIで消毒後、必ず30秒間待たなければならない。PIが乾燥する(殺菌効果が平衡状態になる)までの間、穿刺は待つ(図28左)。
注意: CDC標準予防策として、採血者は手袋の着用が推奨されている。この場合も血管を探りながら穿刺する場合には必ず滅菌手袋を着用する。

採血開始
1)採血チューブのバッグに近い部分を鉗子で止め他後に穿刺する。
2)穿刺は皮膚と15〜30度の角度で針先の切り口を上向きにして刺入する。針を立てすぎると上腕静脈、正中神経を傷つけるので注意する(図29)。

採血中の処置
採血中は採血流量を観察しながら常にバッグを緩やかに振って抗凝固剤と血液を十分混和させる(図30)。

採血中の患者管理
1)採血中は患者の様子に変化がないか常に観察する。
2)血管迷走神経反射(Vasovagal reaction;VVR)は急速に進行することがあり、まれに心筋梗塞などの重篤な合併症との識別が困難な場合があるので、初期の段階で発見して対処することが重要である(図31)(図32)。

採血終了
採血バッグ風袋重量に自己血採血量(mL)×1.05(血液の比重)を加えた重量まで採血する(図33)。


採血後の処置

採血終了とチューブシール
1)チューブシーラーでチューブをシールする。
2)セグメントを作製する。
3)ペースメーカー装着患者では、チューブシーラーの高周波が機器の故障の原因となり得るので、シールは必ず抜針後に行う(図34)。

補液、抜針および止血
1)採血後、原則として採血相当量の輸液を行う。
2)血清鉄が減少している場合には、静脈用鉄剤を追加する。
3)抜針後、皮下出血や血腫の防止のため、通常は5−10分間、圧迫止血する(図35)。

採血後の注意点を患者さんへ説明図36
採血後、以下の事項を説明する。
1)気分が悪くなったら横になって安静する
2)激しい運動や飲酒は避ける
3)高齢者では入浴やシャワーは避ける

自己血の保管管理

輸血部門の専用血液保冷庫で各患者ごとに規定の温度で保管する(図37)。

転用の禁止
1)使用されずに残った自己血は他の患者には使用しない。
2)自己血以外の目的(研究目的等)で使用する場合は、当該の患者本人に十分説明して、了解を得てから行う(インフォームド・コンセントの取得)。
3)廃棄に当たっては輸血部門で一括して取り扱い、感染性医療廃棄物として処理する。

自己血液の返血

自己血輸血前の注意
1)患者検体と自己血のセグメント検体との交差適合試験を実施する。
2)溶血、凝固、細菌汚染による変色、バッグの破損等の外観の異常の有無をチェックする。
3)MAP液で保存する場合は、とくにエルシニア菌の危険性を考慮し、外観の異常の有無に注意する(図38:日本赤十字社 輸血情報 9402−9より引用)。

自己血輸血時の注意
担当医と看護師の複数で声を出し合って患者氏名、生年月日、ID番号、診療科名、血液型、有効期限など確認し、麻酔記録用紙、診療録に記載する(図39)。

自己血輸血開始後の注意
輸血開始後は、同種血輸血と同様の観察を行う(図40)。

エリスロポエチンの使用法

エポエチンアルファは貯血開始前のHb濃度が13g/dL未満の患者には初回採血1週間前から、Hb濃度が13g/dL以上14g/dL以下の患者には初回採血後から、1回24,000I.U.を最終採血まで週1回皮下投与する(図41)。

エポエチンベータはHb濃度が13g/dL以上14g/dL以下の患者を対象に、手術前の自己血貯血期間に1回6,000I.U.を隔日週3回静脈内投与する。初回採血は、800ml貯血の場合は手術2週間前、1,200ml貯血の場合は手術3週間前を目安とする(図41)。

貯血式自己血輸血の3原則

合併症のない採血、安全な保管管理、取り違え事故のない確実な輸血に留意して貯血式自己血輸血を実施することが望まれている(図42)。


説明内容は

「自己血輸血ガイドライン改定案」(自己血輸血14:1-19、2001)
「貯血式自己血輸血ガイドライン作成に向けての検討課題−わが国と欧米のガイドラインの比較検討から−」(自己血輸血18:114-132、2005)
「手術をされる患者さんへ」(キリンビール株式会社制作)

から引用しました。現在改訂作業中の「改訂3版ガイドライン」が発表された後は、本サイトも変更いたします。

小冊子「手術をされる患者さんへ」はキリンビール株式会社へ連絡するとお求めになれます。)

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