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2005年10月 帝京大学整形外科 脇本 信博

 今回、平成17年度日本自己血輸血学会の理事会、評議員会、総会において、浅学菲才の身でありながら、日本自己血輸血学会の初代理事長を拝命することになりました。理事長就任にあたりまして、会員の皆様のご期待にこたえていきたいと決意を新たにしておりますとともに、その重責に身が引き締まる思いです。

 日本自己血輸血学会が開設された昭和62年当時は、献血によってまかなわれる同種血輸血を比較的容易に行うことができ、手術療法が飛躍的に進歩を遂げた時代でありました。ところが、輸血に伴う合併症と副作用として、過去の輸血などが原因で産生された抗体によって生じる発熱や蕁麻疹などの問題がありました。また、輸血後肝炎が社会的に大きな問題となり、日本人に多いといわれている輸血後移植片対宿主病(GVHD)やエイズも問題視されるようになってきました。

 このような時代背景から、同種血輸血の問題点を解決する手段として自己血輸血、すなわち自分の血液で手術の際の出血に対応することが必要とされました。そこで、川崎医科大学の高折教授や順天堂大学の湯浅教授らを発起人として、「自己血輸血に関する基礎的・臨床的研究を推進し、自己血輸血の啓発、普及を図る」ことを目的として、昭和62年に自己血輸血研究会が設立されました。その後、平成8年には会員数が約1,000名となり、日本自己血輸血学会に改変・移行すると同時に、会長のもとで理事会・評議員会において活発な討議を行ってまいりました。

 ところが、現在の自己血輸血をとりまく環境は決してフォローウインドとはいえない状態です。献血された血液に核酸増幅検査が導入された結果、輸血に伴う感染症の危険性が劇的に減少してきました。その結果、自己血輸血に対する関心が低下してきました。また、同種血輸血の安全性が高まってきた中で、「自己血輸血は必要ない」あるいは「自己血輸血の安全性に疑義がある」という批判も生じてきています。しかし、同種血輸血に伴う免疫抗体産生の問題と未知の感染症の問題はいまだ未解決です。肝炎やエイズがすり抜ける問題もあります。一方、自己血輸血には肝炎やエイズの危険性はまったくありません。手術後の血栓症、いわゆるエコノミー症候群の発症率を減少する効果もあり、今後も、適正輸血の推進のために、自己血輸血の確立と普及を図っていく必要があると考えられます。

 そこで、平成17年3月から会長は学術総会の運営に専念し、理事長が学会の代表者として学会のあらゆる諸問題に対応することになりました。そして新しい試みとして、本学会はホームページの中で、学会のトピックスや自己血輸血に関するQ&Aおよび輸血に関する安全性調査などを掲載し、国民の皆様に広くお知らせしたいと思います。また、医療従事者に対しても「自己血輸血の安全性に対する課題」を広く啓発したいと考えております。

 私は、すべての役員、すべての会員の先生方とともに、今一度原点に帰って「自己血輸血学会は本当に社会に貢献できているのだろうか」ということを真剣に考え、取り組んでいきたいと思います。そして、本学会が果たすべき使命である「自己血輸血および適正輸血の啓発・普及を推進することにより社会に貢献」に向かって、本学会を取り巻く様々な課題に対して全力で取り組んで行きたいと存じます。「小さくともきらりと輝く学会」をすべての会員の先生方と造っていきたいと思います。

 本学会に対して、なにとぞ、ご指導、ご鞭撻そしてご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。
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